ウィキノミクスの著者はプラットフォームの側には最終的に勝ち目はないと述べている。その例として、ブロックのおもちゃ「レゴ」で作るロボットの動作をプログラムできる「レゴマインドストーム」を挙げている。
1998年に商品がリリースされた直後、レゴはハッキングを開始したユーザーに対し法的手段に訴えるとまで示唆した。しかし、ユーザーの猛反発によって、レゴが折れた。今では、逆に「何も支払ってないのに、ユーザーが商品価値を高めてくれる」とレゴのスタンスは180度変わっている。
著者は、SCEのような対応は避けるべきで、積極的に取り込んでいくべきと論じている。管理統制は不可能で、ツールキットと環境整備を進め、自らもその一部となり、ユーザーと成果を共有すべきだと述べている。自らが上流のプラットフォームホルダーとして、ユーザーをコントロールできる立場にいると考えるべきではなく、同じ立場に近づいたうえでビジネスを展開するべきだと論じている。
しかし、レゴの場合は、レゴ単独だからできた。アップルやSCEの場合は、現在のビジネスモデルを構成する関係企業がいる。それらの企業との利害調整をどうするべきなのか、本を読み終えても結論が見えるわけではなかった。
この本で賞賛されているセカンドライフも問題を抱えている。7月2日号の米フォーブス誌が伝えたところによると、ウェルズファーゴ銀行がセカンドライフ内で金融教育を行う場として運営していた土地から撤退したという。担当者によると「イラクでフィールド・マーケティングを行うのと同じようなものだ」とまでコメントされている。
撤退したウェルズファーゴ銀行が賢明だったのか、管理統制を放棄したモデルを取るリンデンラボのどちらが正しかったのかがはっきりわかるのは、まだ時間がかかるだろう。未来に向けた創造性の潜在的なプールを持つことができる代償として、リスクは常に付随する。未来は決まっているわけではない。