ZARDがクラシック音楽の高度な手法を取り入れている、と感銘を受けたファンの方々には申し訳ないが、しかしこのコード進行は、「カノン進行」なんて言葉もあるくらいで、ポップス、とりわけ日本のポップス界では非常に多くの使用例があり、(細かな装飾の仕方の違いによるヴァリエイションの違いも含めて考えると)ありきたりと言ってもいいぐらいのものなのだ(曲名に「カノン」という言葉を入れた思わせぶりな作品もある!)。
その例として、僕がまっさきに思い出したのは、チューリップの「心の旅」(73年)だったが、洋楽では、ロッド・ステュアートのカヴァーでも知られるアイズリー・ブラザーズの名曲「ディス・オールド・ハート・オブ・マイン」(66年)といった例に思い当たった。
先に触れたダリル・ホールの「ドリームタイム」などは、この曲のアレンジなども意識した上で、敢えて同じコード進行を使って書かれた曲だと思うし、ZARDの「負けないで」(作曲は織田哲郎)だって、そうした「カノン進行」を使った楽曲群の歴史をある程度以上は考慮に入れ、そんな歴史を代表する曲として「ドリームタイム」を下敷きに「確信犯」的に作られた曲のはずである。
ビーイングの同時期のヒット曲には、ZARDで言えば、やはり織田哲郎作曲の「眠れない夜を抱いて」(92年)、「揺れる思い」(93年)。さらに、T-BOLANの「Bye For Now」(作曲=:森友嵐士/92年)、川島だりあ「悲しき自由の果てに」(作曲=川島だりあ/92年)、中山美穂&WANDS「世界中の誰よりきっと」(作曲=織田哲郎/92年)、日本テレビの巨人戦ナイターのイメージソングとして作られ、ZARDやWANDSのメンバーが歌い、長嶋茂雄監督(当時)も一節聞かせたことでも話題になった「果てしない夢を」(作曲=出口雅之/93年)など、作曲者が誰によるかに関わらず、広義の「カノン進行」を効果的に配した曲が結構あった。
ZARD「眠れない夜を抱いて」 TV朝日「トゥナイト」エンディング・テーマ
ZYYG, REV, ZARD & WANDS featuring 長嶋茂雄「果てしない夢を」
日本テレビ劇空間プロ野球イメージ・ソング
ここに、音楽事務所ビーイングの「確信犯」的な制作姿勢がハッキリと見えてきた。それと同時に、フィル・スペクターのフィレスやモータウンといった、60年代的なレーベル主導のポップス制作手法に影響を受けていたと思われるビーイングらしいやり方なのだな、と結構納得しながら聞いていた覚えがある。
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